神話の神々についての

チャネリング.2◆

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[八剣伝]つづき
(前ページ:ソサノヲの生い立ち/シヅヒコ/婚約者の死/陰謀/裁判で/岩戸開き
勅命八岐大蛇を倒す結婚九頭大蛇を倒す稲田姫の手紙娘の結婚
◆勅命を受けて
 おそらく、持子姫・早子姫との決着をはたしに、根の国に向かったのだろう。
シヅヒコ(タヂカラ)は直感した。ダテに幼い頃からつるんでいる仲ではない。
ソサノヲ様は徒歩だ。一度、母(昼子姫=和歌姫)の所に挨拶に立ち寄ったと言うし、今ならまだ追いつけるはずだ。
タ:「とは言っても、ソサ様、足速いからなー。
 紫輝、頼むぞ。おまえの主人のところに連れて行ってくれ」
 ふだんは主人以外になつかない馬だが、共に信頼する相手に置き去りにされたことが共感を呼ぶのか、シキは大人しくタヂカラ=シヅヒコを背に乗せた。
 都を出て、田畑を越え、草原を越えて行くと、遠い森の入り口に見覚えのある人影が見えた。
タ:「ソサノヲ様?」急いで馬を駆けようとすると、すぐ横からあやしい人影が飛び出して来た。
男:「その剣と馬を置いていけ!」
 どこに隠れていたのか、大柄な3人の男たちが、タヂカラの周りを囲むようにして立ちふさがった。
タ:「なんだ?お前たちは…」
 まあ、こんな所に出てくるのは、だいたいが山賊をなりわいにしている輩なのだが。
山賊:「こっちは、3人だ。命が惜しければ、さっさと置いて行け! (馬を)降りろ!」
 この間にも、ソサノヲ様はどんどん先へ行ってしまう。無駄な争いや刃傷沙汰は好まないが、タヂカラも気持ちが焦っていた。
タ:「私は今、ムシの居所が悪いんだ。命が惜しくなければかかって来い!」馬から飛び降り、剣を抜いた。
山賊:「3人相手に、死ぬのはてめぇだ!」
 タヂカラの剣も、八重垣の剣だ。これまで戦や討伐で数百人を相手に戦って来ている腕前だ、ザコ3人に2秒も要らなかった。
タ:「あ〜あ。ったく、お前たちのせいで、ソサノヲ様を見失なっちまったじゃないか。
 森の中じゃ、そう簡単に捜せないよ」
 手綱を引き、ため息をついて森の中を歩き始めた。これから、どうやって探そう…?
日が暮れてきたので、とにかく火を焚いて野宿することにする。
 <ガサッ!> 闇の向こうで音がした。また山賊か?心臓が高鳴る。火を消して臨戦体制に入ると、すぐ後ろで気配を感じた。
タ:「うわぁっ!」マジ驚いて飛び退いたら、ソサノヲ様だった!
タ:「ソサノヲさま〜!」あまりの嬉しさに抱きつこうとしたら、よけられてしまった。
 「ひどーい!あんまりですぅっ」
 いつものシヅヒコのリアクションにちょっと安心して、ソサノヲも警戒を解いた。
ソ:「いや、すまん。いきなりタックルして来るから、つい条件反射で…」
 めずらしく言い訳をするところが、わざとらしいかも…。
ソ:「こんな所で何してる」
タ:「あなたの馬と剣をお持ちしました」
ソ:「それは受け取れない。帰れ」
タ:「そうはいきませんよ」
ソ:「帰れ! …かわいい妹(いも=妻やガールフレンドのこと)が待ってるんじゃないのか?」
 まったく、このヒトわ! 痛い所を突いてくるなぁ。
タ:「大君に、あなたを討てと言われました」とりあえず言って、反応を見る。
ソ:「殺されに来たのか」冷たく言い放つと、闇に向かって歩き出す。
 攻撃する気はないようだ。タヂカラが、荷を持ってあとをついて行こうとすると、ソサノヲはふり返って
ソ:「戻れ!どうなっても知らんぞ」
タ:「戻れません。勅命ですから。命を果たさぬうちは戻ってはならないとの仰せです」
ソ:「ならば、戦うか?」
タ:「えっ?」
 ソサノヲは、向きなおって身構えた。手には杖代わりの長い枝を持っている。あれ?本気…?
タ:「やめてください。そんなことできるわけないじゃないですか!…だいいち、私があなたに勝てるわけがない」
ソ:「どうかな… やってみなければわからんだろう?」
タ:「う…」 いや、そんなこと言ったって。やる前から、勝負はついてると思うんですけど…?
ソ:「ついて来るな!」
  自分を追い払おうとするソサノヲに、タヂカラも抵抗する。
タ:「持子・早子姫を討ちに行くのでしょう?私も共に参ります」こっちも引き下がるわけにはいかない。
ソ:「では、剣を抜け。覚悟を試してやる」
タ:「え…」
 言うが早いか、ソサノヲはタヂカラの剣を抜き取り、打ち込んで来た。間一髪でかわすと、タヂカラもソサノヲに渡すはずだった剣を抜いて応戦する。ちょっと待って…
ソ:「家に帰れ!」
タ:「いやです!」
 訓練の時とはまったく違う。むしろ戦場で戦っている時の鬼気迫る姿。ソサノヲ様なら、敵を秒殺。1000人くらい相手にしても無傷だろう。今まで、そこまで戦わないうちに、向こう(敵)が逃げるか降参してしまったが…。
 こっちも必死で逃げ回っているので、森の木と闇が邪魔して、かろうじてかわしていられる状態だ。
タ:「うわっ」
 どうやらソサノヲ様は本気だ。反撃しなければ、殺される!
タヂカラもソサノヲの剣めがけて、必死で太刀を振り降ろした。が、一瞬でかわされ、剣を弾き飛ばされてしまった。その勢いで倒れ込むと首筋に剣を押し当てられて、身動きがとれない。
タ:「私を殺して、逃げてください」覚悟は出来ているのだ。ついて行けないなら、死んだ方がマシだと思った。
ソ:「命乞いしないのか」
タ:「したら、助けてくれますか?」
ソ:「どうかな…」
タ:「じゃあ、好きにしてください」
 ソサノヲは、かすかにフッと笑って剣を納めた。タヂカラの腕をつかんで引き起こす。
ソ:「私に従え」
 いや〜そう言われたら、聞かないわけにはいかないなぁ。タヂカラは着物を整えて、ソサノヲの後に着いて行く。
 二人はもともと育ちのいい生まれだが、戦場に出ることも多いので野宿には慣れていた。
戦場で待機している時、タヂカラはよく火を囲んで年下の兵士たちに話をした。話題はもっぱら「どうやって良い姫をゲットするか」「どうしたら、良いメ(=姫=女性)からパワーがもらえるか」だ。
感謝と賞賛のテクニックを講義して、具体策を伝授。立派な母(和歌姫)に上手に育てられると、男の子も幸せになれるということか。
 旅の途中、二人は小さな村の娘を助けて、シラビトやコクミの情報を聞き出した。
村人はソサノヲとタヂカラを歓迎しつつも、シラビト率いる「ハタレ魔軍」の軍門に下り、二人を捕らえて差し出そうとしたのだが、村娘たちに逃がしてもらうことができた。
 このあたりのエピソードは、18禁。まるでレディスコミックのようで教育上よろしくないので(笑)省略。聞きたい方は、直接どうぞ。

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◆八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を倒す
 途中の村々で集めた情報によると、なんと、持子・早子姉妹は、ハタレ(波動が低いという意味の異民族や呪術師)を束ね、呪術を習って、彼らに邪悪なエネルギーを送っているらしい。
そのハタレ魔軍の連合に加えようとして、村々を襲っていた。
 この先の簸川(ヒカワ)の村の八重谷では、早子が大蛇(オロチ)を使って恐ろしい呪術をかけているという話だった。
大蛇の数は8匹、ちょうど太陽神の巫女が8人の戦士を得るように、8匹のしもべを持っているようだ。
 二人が八重谷の村に着くと、あたりは静まり返っていた。中心の一番大きな建物に着くと、老夫婦の姿が見えた。
ソサノヲとタヂカラは、名乗って事情を説明する。
 聞けば、村人が何人も襲われて、娘たちをオロチの生け贄にするように言われているのだとか。
呪術にエネルギーを使い果たすと、波動が下がる。早子はその補充に、村長:足名椎(アシナヅチ)とその妻テニツキの娘たちのパワーを吸い取っていたらしい。
テ:「7人の娘が生け贄にされて…もう、私たちには末娘しか残っていません。娘を助けてください」
足:「娘たちがいなくなれば、今度は村の娘が狙われます」
タ:「大丈夫。我々が来たからには、もう心配いりませんよ」
 オロチの居場所を聞いていたら、奥の部屋から末娘の櫛稲田姫(クシイナダ姫)が出て来た。
稲:「いけません。危険です。今までも村の男たちが退治しに行ったのです。みんな戻って来ませんでした。
 私のために、これ以上命を失う者を出したくありません」
 はりゃ〜。生け贄にされるというから、どんなお姫さまだろうと思ったら、かわいいけど気の強そうなコだ。
聞けば、イナダ姫の従兄弟たちも、オロチ退治で命を落としていた。
ソ:「悪いが、あなたのためじゃない。我々は、あのオロチ使いに用があるんだ」
稲:「…?」なおも心配そうな姫に、ソサノヲが言う。
ソ:「それに、私は朝廷を追われた身、オロチを倒すためなら、失ってもかまわない命だ」
稲:「そんなこと、言わないでください!」
 なんか、ソサノヲ様を叱っているようでもある。気丈な姫だ。たった一人になっても命乞いもせず、こちらの身を案じるとは。
 ソサノヲは、子供の頃に毒蛇を退治した経験から、オロチにふるまう酒に毒(ハーブ)を盛って骨抜きにする作戦を立てた。
将軍ツワモノヌシが極めた、「魂返し(たまがえし)の奥義」を思い出す。
魂には「タマ(天に返る)」と「シイ(地に返る)」があって、そのつながりを断ち切らなければ正式に天に返れないということから、ノリトや呪文(仏教ではお経)を唱えて、魂の波動を上げさせ、タマとシイを分ける技術を「魂返し」という。
常に将軍の近くにいたソサノヲは、それを習っていた。
 準備を整えて、オロチのいる八重谷に向かう。ここは常に叢雲(むらくも)が立ち上っているということだった。
途中まで道案内をしてくれたイナダ姫に別れを告げると、
稲:「どうか…、生きて戻って来てください」ソサノヲの着物の袖をつかんで、言う。
 ソサノヲは、ずっと思っていた。いつか自分が死ぬ時は、姉君(昼子姫)かハヤスウ姫を想って死ぬことになるのだろう…と。でも、違うようだ。
彼は、今まで味わったことのない力強さを感じていた。
 岩場の大きな松の木の前に、洞窟が見える。貢ぎ物の酒と食べ物を運んで夜まで待つことになった。オロチは夜、生け贄を食べにやってくるのだそうだ。
 イナダ姫から着物(羽織るもの)を借りたソサノヲは、薄い麻布(ベール)をかぶって姫のふりをして時を待った。
タヂカラは、岩場に隠れて様子を窺う。今度は、ソサノヲ様が女装する番だなぁ…などと想っていたら、洞窟の奥から人の声がする。
おいおい、大蛇はどうしたんだ?
 8人の男たちが出て来て、置いてある食べ物をむさぼりはじめる。どういうことか?とにかく状況を把握しなければ…。
 身体の大きさに気づかれたら、姫ではないことがバレてしまう。ソサノヲが怯えたふりをして離れた所にうずくまっていると、やがて男が近づいて来た。
そういうことか。不幸な?過去がよみがえって来る。
 でも相手が人間なら、話は早い。タヂカラに合図を送って、二人で一気に8人を斬り伏せた。
…と思ったのだが?
 倒れたはずの男共が死なない。足もとには、大きなニシキヘビの屍骸がころがっていた。
タ:「なんだこれは?」
 やばい。身構えて良く見定めると、ゾンビになっている男たちの後ろに早子姫がいた。パワーを送っているのだ。そのエネルギーが、大きなヘビか龍に見える。8頭の黒いオロチだ。
 これだけのパワーを使ったら、若い娘の精気くらい欲しくなるだろうな…。
オロチが邪気を放って来る。普通の人間なら、こういう邪悪な波動だけでも相当なダメージを受けるだろう。でも、ソサノヲ様はどちらかというと、こっち(闇)に近いのだ。
タ:「ソサノヲ様。死んでる相手を倒す方法、ご存知ですか?」
ソ:「魂返しだ。タマとシイを分けるんだ」そういうと、ソサノヲは自分の剣にパワーを込めはじめた。
 剣はただの武器だが、使う人間の霊的なパワーによって、威力が変わる。
ソ:「闇のものは、闇に返れ!」8人を斬り、早子姫にとどめをさして、戦いは終わった。
 邪悪な顔つきになっていた早子姫だが、死に顔はもとの美しい姿に戻っていた。かわいそうというか、哀れというか。
ソサノヲは、早子姫の遺体を抱き上げて、村に運んだ。
 オロチは倒したが、実はこれで終わったわけではなかった。
この段階ではまだ「魂返し」は不完全だったのだ。八岐大蛇はこの後の(ニニギ天皇とコノハナサクヤ姫の)時代に、イワナガ姫に転生したと言われている。
 ケガというほどのものではないが、岩穴で飛び跳ねたので、スリ傷だらけになった。
村に戻ると、イナダ姫が待っていた。泣きながら、ソサノヲにしがみつく。
稲:「よかった。ご無事で…」
ソ:「………」
 ソサノヲにとって、こういうシチュエーションは初めてだったが、何かとても温かい感じがした。
手当てを受けて着物を整えていたら、アシナヅチ夫婦がやって来た。
足:「どうか、ここに留まってください」
ソ:「気持ちはありがたいが、私たちはもう一人、持子を討たなければならない」
テ:「では、その後で構いません、ぜひこちらにお戻りになってください」
ソ:「それは…」
足:「娘はあなたのことをえらく気に入っているのだが…妻をめとる気はないだろうか?」
 いきなりの提案だったが…じつは、ソサノヲやタヂカラのように朝廷の一族は、素性がわかるとその血縁や子孫を求める人々から婚姻を勧められることが多いのだ。
ソサノヲは自分は朝廷を追われた身だから、迷惑をかけるからと言って、断った。
あのかわいいイナダ姫を守るためなら、戦ってもいいな…とは思う。だからこそ、自分がいることで村に迷惑をかけたくなかった。
タ:「持子姫を討てば、都に戻れますよ」
ソ:「別に、戻る気はない」
タ:「だったら、やっぱりイナダ姫と結婚すべきですよ!
 パワー送ってくれてたんですよ、我々に。早子姫以上かもしれない。それに、あんなにかわいいのに…」
 たたみかけるように言われては、反論もしようがない。逃げることにした。
旗色が悪くなって席をはずしたソサノヲの背中に向かって、タヂカラはまだ言葉を続ける。
タ:「どうせ何をしても朝廷に悪くとられるんなら、何やったっていいじゃないですかぁ」

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◆クシイナダ姫との結婚
 八岐大蛇(ヤマタノオロチ)早子姫を倒したソサノヲは、自分の剣を朝廷に返すようにタヂカラに言った。
タ:「え〜。私がいない間に、一人で持子姫を倒しに行っちゃうんじゃないですかー?」
 タヂカラの心配はもっともだ。ソサノヲの性格から、単独行動は予想がつく。が、予想に反してソサノヲは首を振った。
ソ:「持子は当分動かないだろう。用心深いからな。
 それより早く朝廷に戻って、ハタレ軍団の状況を報告してくれ。軍備を整えないと、間に合わない」
 戦争を始めるには準備がいる。武器の増強もそうだが、馬や兵隊の訓練、兵士たちを養う食糧、兵器を運ぶ馬や車、軍事基地になる場所の設定…大きな戦いになることが予測されるだけに、補給経路の確保は大切だ。
それに、敵の軍備の状況を調べ、どこからどんなふうに攻めてくるか、こちらはどう攻めるか、戦略を立てなければならない。
 確かにソサノヲ様の言うことは理解できるけど、なんとなく一人にしておくのは心配だった。
と、そばでお茶を用意していたクシイナダ姫が、にっこり笑う。
稲:「タヂカラ様、わたしが見張っていますから大丈夫ですよ」
タ:「おお〜、イナダ姫!それは頼もしい。 どうかソサノヲ様に優しくしてあげてください♪」
 そう言いながら姫の耳元に顔を近づけると、小さい声でつけ加えた「怖がりなんで」。
ソ:「聞こえたぞ。さっさと支度しろ!」
 タヂカラは小さく舌を出して退散した。
 クシイナダ姫は、古事記では「櫛稲田姫」と表記されているが、本当の名前ではなかったらしい。
「櫛」は「奇し=めずらしい、めったにない」の意味の「クシ」で、「稲田」は「実り豊かなこと」を表している。実際は、本当の名前を隠さなければならなかったか、誰かのことをあえてそう呼んだふしがある。
 美内すずえのマンガ「アマテラス」で「クシュリナーダ」と呼ばれていたが、むしろそちらが本当の名前らしい。「ソサノヲ」のパートナーは必ず「イナダ姫」と呼ばれるお約束のようなもので、「櫛稲田」は当て字ということになる。
 ソサノヲは朝廷の出方をみるため、しばらくは村で過ごすことになった。
村びとが野盗を追い払うための訓練などを頼まれ、戦い方や剣の使い方などを教えていた。
体力には自信があるので、畑仕事も手伝って戻って来ると、姫が練習している琴の音が聞こえた。
琴の音はオロチを和(やわ)すと言われる。
 イナダ姫が気配に気づき、手をとめた。邪魔をしてしまったかな…と思って声をかける。
ソ:「聞いていてもいいか?」
稲:「まだ上手くないので、恥ずかしいです」
ソ:「そんなことはない」 
稲:「途中に難しい所があって、指が上手く動かないのです」
 ソサノヲは、部屋にあがると姫の指に手を添えて弦を弾いた。
ソサノヲの姉:昼子姫は和歌と琴の名手だ。幼い頃、だだをこねて一緒に弾かせてもらった。琴を弾いたり聞かせていればソサノヲが大人しくなったので、あまり反対もされなかったし…。
 武人のソサノヲが琴をたしなむとは思ってもみなかったので、イナダ姫は驚いた。そして、もっと教えてくれるように頼むのだった。
二人は急速に仲良くなって、その後もいろいろあったが、最後は結婚することになったようだ。
 ある時、10才くらいのやんちゃな少年が連れて来られた。
村人:「人に迷惑ばかりかけて、こまったヤツです。懲らしめてやってください」
 少年は、母親を亡くしたばかりだった。
ソサノヲは、その子がよく村びとへの訓練を覗き見していたのを知っていた。
ソ:「剣術は好きか?」
 少年が黙って頷く。少年に訓練用の木の棒を渡して、
ソ:「なら、かかって来い」
 少年がためらいながら棒を振り降ろすと、ソサノヲが軽くはじき飛ばす。それでも拾って、今度は夢中で打ち込んだが、相手が強すぎてかなうわけもなかった。必死で打ち込んでいくうちに、息もきれてくる。
ソ:「もっと強くなりたいか?」
 少年が悔しそうにうつむく。
ソ:「強くなってどうする?」
子:「バカにしたやつらを、見返す」
ソ:「それでは、強くはなれない。剣は、持つ者の心があらわれる。
 まわり(他人)ばかり見て、自分を見なければ迷いが出る。迷いがあれば、切っ先も揺らぐ。強くなるには、覚悟がいるぞ」
子:「どうすれば、あなたのように強くなれますか?」
 少年の目はまっすぐにソサノヲを見つめていた。

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◆九頭オロチ(持子姫)を倒す
 ホツマでは、持子姫がソサノヲにクーデターを持ちかけてから、朝廷とハタレ大魔軍との戦いに決着がつくまで、約8年(八年戦争)と言われている。8年という語呂合わせは大袈裟だが、けっこう長期間の紛争だったようだ。
 ソサノヲの剣を持ち帰ったタヂカラは、まだ勅命を果たしていないので、直接朝廷に戻ることはできない。
母の待つ屋敷に帰り、父オモヒカネへ伝言を頼んだ。
ハタレ大魔軍が戦の準備をしている。こちらも軍備を整えて迎え撃たなければならない。そのことを、タケミカヅチ様や伊吹戸主命(イブキドヌシのミコト=月讀尊の息子)に確かめに行って欲しい、と伝えた。
 そうこうしているうちに、とうとう国境線を越えてハタレ大魔軍が攻めて来た。
向こうには、朝廷の内部を知っている持子姫がいる。しかも、巫女としてのパワーも強い。妹:早子を失ったとはいえ、むしろ邪悪さはますます強まっていた。
 13人の姫のうち、パワーのある2人を失った朝廷は、守りが手薄。
一騎当千の武将ソサノヲを失った軍隊も手薄。タヂカラも取りあえず戦に参加するように要請された。
大軍団が攻め込んでくるという知らせが入り、都を守るツハモノヌシ(春日殿・春日神)以外の7人の武将が[八重垣の剣]を取り、迎え撃つことになった。
皇軍の武将は、カナサキ(住吉神)・経津主(フツヌシ=香取神)・タケミカツチ(鹿島神)・伊吹戸主(イブキドヌシ=月讀尊の息子)・荷田命(カダのミコト=保食神8代目:稲荷神)・楠日神(熊野クスヒ:アマテル神の息子)・そしてタヂカラヲのミコト…。
 八方を守るには一人足りない。ソサノヲがいないのだ。
 イブキドヌシが根の国(後の出雲)をまわり、クシイナダ姫のもとにいたソサノヲに参戦するよう説得に行くことになった。
ホツマでは、自分のおろかさに気づいたソサノヲが嘆いている所に、通りかかったイブキドヌシが同情して手柄を立てるように勧めたという話になっている。
 だが、ソサノヲは一筋縄では説得できない。戦場に赴くことは決めていたが、アマテル神からの要請ではないからほかの武将達の手前もあり、一緒に行くことはできないと言う。
それを見越して、タヂカラはイブキドヌシにあるものを渡していた。
伊:「叔父上、これをお持ちください。剣です。タヂカラが、あなたに渡すように言いました」
 布鞘に入った剣を掲げたが、ソサノヲは受け取らない。イブキドヌシはその場に剣を置くと、軽く礼をして駆け去った。
 剣を残されて放っておくわけにもいかず、手に取ると、布を解いて確かめる。[八重垣の剣]だ。見覚えがある。
だが、それはソサノヲの剣ではなかった。
ソ:「シヅヒコ…?」
 手元にあるのはタヂカラの剣だった。二人の剣はよく似ていたが、持ち主が間違うことはありえない。ソサノヲは苦笑した。
ソ:「まったく…」
 タヂカラのメッセージを受け取って、ソサノヲは戦場に赴くことを妻(イナダ姫)に告げた。タヂカラが残して行った愛馬:シキにまたがり、国境をめざす。
 何日間もの戦いで、戦場は混乱していた。武将たちにも疲れが見えはじめる。
持子姫は、シラビト・コクミをはじめとするハタレ大魔軍の8将軍たちに、後方からエネルギーを送っていた。
その姿は、まさに九頭オロチだ。
 本来なら、巫女や姫が天からのエネルギーを降ろして、八方を守る8人の戦士に送る。中心の姫を入れて、九つに別れた光が、[九頭龍(くずりゅう)]と呼ばれるのだが…。
 持子姫と同等のパワーを持つセオリツ姫が、他の10人の姫の力を束ね、朝廷からエネルギーを送っていたが、いかんせん、「戦い」に使われるのはかなり低い波動(物質に近い波動)の方なのだ。癒しや調和を常とする自分達の得意分野ではない。
 邪悪さを学んだ持子姫の方が、(実用的ということで)一枚上手だった。
タヂカラも敵陣深く切り込んで行ったが、呪術者と組んで兵士にパワーを送る持子姫に圧倒されてしまう。
 その時、待ちに待った声が聞こえた。
ソ:「シヅヒコ、お前の剣だ。届けに来たぞ!」
タ:「ソサノヲ様!」
 作戦は成功。自分の剣を渡せば、必ずここへ来てくれる。ソサノヲ様が戦場に来なければならない理由ができる。叱られるのは、自分だけでいい。タヂカラの捨て身の作戦だった。
 一方、朝廷の11人の姫たちは、社(ヤシロ)に集まり、祝詞(祈りの言葉)を唱えて、戦士達にパワーを送りつづけていたが、やはり持子姫の邪悪な波動の方が、姫たちの祈りの波動を打ち破って戦場に届く。
持子姫の低く重い波動に押されて、11人の姫達のうち何人かは気を失い、セオリツ姫にも疲れの表情が出てきた。
 その時、どこからか琴の音が聞こえた気がした。耳を澄ますと、それは遠い遠いどこかから、心に響いて来る。
瀬:「あなたは、誰…?」一人の乙女のビジョンが見えた。
 …そう、それはソサノヲの妻:イナダ姫の奏でる琴の音だった。
イナダ姫は夫をサポートするためにパワーを送っていたのだが、ヤマタノオロチとの戦いで、普通の祈りの力では邪悪な波動に太刀打ちできないことを知っていた。かといって、同じ邪悪な波動を使えば自分の身も危ない。
敵はオロチ、オロチを和すのは「琴の音」。イナダ姫は、身を浄め精神集中して琴を弾き続けた。
 朝廷でそれを感じたセオリツ姫も、侍女達に琴を用意させ、11人の姫全員で琴を奏でるという作戦に切り替える。戦場に、琴の音の波動が流れ出した。
それが九頭オロチ:持子姫に届き、波動が乱れはじめる。調和した琴の波(コトのハ)がオロチを制していくようだ。
 愛馬にまたがったソサノヲは、向き直って大きく剣を構えた。
ソ:「待たせたな、持子!」
 ジャマな連中はタヂカラが片付けた。剣を交換しているヒマはない。
ソサノヲが、オロチを倒すための魂返しをとなえはじめる。
ソ:「闇のものは闇に…」その時、何かが足りないと気づいた。そうだ…もとは彼女も光り輝く姫だった。[タマ(天の霊)]と[シイ(地の霊)]はどちらも癒されなければならない。
ソ:「光のものは光に…返れ!」
 剣に込めたパワーを叩きつけるように、持子にふり降ろすと、天から稲妻のような光が起きた。
持子姫は、その光に見とれているような空ろな目で、力なく倒れていった。わだかまったエネルギーを素粒子のレベルに戻したのだ。
オロチが消え、力を失ったハタレ魔軍はどんどん敗走していった。 皇軍の勝利だ。
 その流れを見届けると、ソサノヲは再び剣を置いて立ち去っていった。
 波動の低い状態のエネルギーが渦をまくと、黒龍に見える。波動の高いエネルギーの渦は、白龍または白蛇に例えられる。波動がどんどん高くなると、地上より上に上がって行くので、そのエネルギーを総じて「龍」と呼ぶ。
龍以外にも「羽のある蛇」「翼竜(ドラゴン)」などは、ほぼ同じエネルギーの流れを指している。
 波動が低い黒竜でも本来は[エネルギーの流れ]なので、移動することは可能。
[大蛇(オロチ)]という名称は、低くわだかまったエネルギーのイメージを言霊で表現している。特にホツマでは、感情的なエネルギーのわだかまりを表し、いつでも大きなエネルギ−と繋がることができるだけに、女性による場合が多いそうだ。
 持子姫は、ソサノヲの魂返しによって光(エネルギー)を与えられて死んだので、オロチではなく竜になって天に返った。(ホツマでは、持子姫には「九頭オロチ」が憑いていたということになっていた。セオリツ姫を狙って150万年潜んでいたといい、後に信濃の戸隠でソサノヲの孫の一人、島津彦(島津大人=シマヅウシ)が発見し、説得して清めたともいわれている。)
 すべて等しく気高い魂にとって、悪役(罪人)を演じるというのは、最高位の愛の表現でもある。
今は[九頭竜]の弁財天(セラフィム)として祀られ、女性原理の象徴になっている。他の龍を従えるだけの力を持ち、女性には[魂の力と自信]をサポートし、男性には[戦うための女性パワー]をサポートしている。
 九頭オロチの持子姫と正妻のセオリツ姫はライバルで、陰謀を企てた方が滅びている。後にチャネルしたのだが、二人はその後、コノハナサクヤ姫とイワナガ姫に生まれ変わり、ちょうど逆バージョンを演じていたらしい。それで、二人のトラウマはチャラになったようだ。

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◆クシイナダ姫の手紙
 戦勝報告を聞き、都の民衆も喜びにわいた。朝廷もようやく安堵の空気になってきた。
タヂカラは、思い返していた。ソサノヲ様が戦場に現れた時、とても大きなエネルギーを感じた。はじめは、ソサノヲ様の気迫がパワーアップしたのだと思ったが…
タ:「あれは…イナダ姫の加護の力だ。それが、ソサ様だけでなく、我々にも届いていたんだ。いや〜さすがだなぁ」
 男は、女の力をまとって強くなる。詳しくいえば、女性が宇宙や大地と繋がって受け取るエネルギ−をどんどん流してもらえる男性が出世する、ということだ。
ソサノヲ様ともなると、サポートする女神もすごい。イナダ姫は、姿こそ小柄だけれど、むしろ見えないエネルギ−は大きいようだ。自分にもそういうメ(彼女)が欲しいものだ…
思:「感心している場合ではないぞ。シヅヒコ」
 父、オモヒカネ=アチヒコが戻って来ていた。実は、タヂカラは謹慎させられていたのだ。
持子姫を倒した剣はタヂカラの剣だったが、問題は使ったのがソサノヲだったということだ。
 朝廷では、気になる報告が届いていた。
伊:「確かです。九頭オロチとなった持子姫を倒したのは、ソサノヲ殿でした。ほかにも見た者が多数おります」
 アマテル神の弟:月讀尊の息子である伊吹戸主(イブキドヌシ)が、証言する。
伊:「皇軍の陣に、持子姫の遺体と八重垣の剣を届けたのち、立ち去ったとのことです」
思:「シヅヒコも同じことを申しております」
天:「立ち去った…どこへだ?」
思:「おそらくは、ヒカワの地アシナヅチの宮のクシイナダ姫のもとへ」
天:「ソサノヲは追放の身だったはずだ。さて、どうしたものか…」
家臣A:「やはり手柄には褒美をとらせるべきでは?」
家臣B:「いや、流浪(さすら)の身、名乗らなかったのもその身を承知していたからこそ。それを取り立てるなど…」
天:「オモヒカネ、どう思う? …セオリツ姫、どうだ?」
 問われて、その優しく鋭い目を開き、中宮ホノコ(瀬織津姫=セオリツヒメ)が微笑する。
ソサノヲ殿よりも…その妻(いも)であるクシイナダ姫の存在が気になる。この戦いの勝利にもっとも貢献したのは、彼女といっても過言ではないのだ。どんな人物なのか、知っておきたい。
瀬:「お試しになられてはいかがです? ソサノヲ殿に褒美を与え、受け取るか否か」
思:「なるほど。朝廷に仇なす気であれば、辞退することもありえる」
 アマテル神は遠くを見つめながら、心の中で苦笑した。
天:「“あれ”が素直に受け取るかどうか…」
 朝廷からの報賞の品々を積んで、勅使の一行はヒカワの地に向かった。
ソサノヲが褒美を受ければ、朝廷からその手柄を認められたことになる。ソサノヲが許されればタヂカラの任(勅命)も解かれる。
 アシナヅチの屋敷では、2人目の子供を身籠ったイナダ姫とソサノヲが仲良く暮していた。
村人:「ソサノヲ様、お客様です。朝廷からの使いの方々とのことです」
 朝廷からと聞いて、たくさんの荷物を前に、ソサノヲは警戒する。
ソ:「帰ってくれ。受け取るいわれはない。私は自分の責務をはたしただけのこと。誰に誉められるものでもない」
勅使:「ですが、ソサノヲ殿…」
稲:「お待ちください」
 やりとりを聞いていた、妻イナダ姫が口を開いた。
稲:「遠い所をおいでくださったのですから、まずはお休みください。お茶やお食事のご用意も致します。どうぞ」
 そう言うと、食事を用意してお遣いをもてなす。
ソ:「イナダ姫…」 ソサノヲが心配して声をかけると、
稲:「朝廷はあなたを試しておいでです。受け取らなければ、朝敵としてこの村にも危険が及びます。タヂカラ様にも迷惑がかかります」
ソ:「それは…」 確かにその通りだが、受け取ればすむという相手でもない。
稲:「わたしにお任せください」
 にっこりと微笑む妻。ソサノヲは、その強さにいつもかなわない。
稲:「アマテル神にお伝え申すことがございます。このフミ(手紙)をお届けください」
 朝廷に戻った遣いは、ソサノヲの妻イナダ姫からの手紙を大君に読み上げた。
「このたびの、夫ソサノヲへの褒美の品々、まことにありがたきことこの上ない幸せにございます。謹んでお受け致します。
 つきましては、品々はわが家のつましい暮らしにはもったいなく、村人と分かち合い致しますことお許しいただきたく願います。民を思う大君の慈悲深いお心を、皆喜ぶことでしょう。
 本来ならば、御礼に参上すべきところ、わたくしが身重のためご容赦くださいませ。
 身が整いましたら、夫婦そろってご挨拶に参ります。どうかこのわがままをお聞き届けください」
勅使:「--とのことです」
天:「ほう、クシイナダ姫…か。 どうだ?ホノコ」
 セオリツ姫は手紙を持ち、遠くを見据えるかのようにイナダ姫の波動を読んでいた。
瀬:「見事なフミです。 賢い姫ですね…。
 朝廷に従い、謀反をおこす気はないという姿勢をあらわすために、報賞を受け、手柄をひとり占めする気もない、と村人に分け与え…」
天:「自らがフミ(手紙)を書くことによって、自分の目の黒いうちは、(夫を)朝廷に逆らうようなことはさせない…と言っているのだ」
瀬:「暗殺の危険のあるソサノヲ殿を一人でよこすような危険なマネもさせず、それを自分のせいだ、と夫をかばう…」
 アマテル神は、フッと笑った。
天:「たいした姫(おんな)だ」
 それを受けて、セオリツ姫も微笑んだ。
瀬:「ぜひ、お会いしたいものです。 出産の無事を祈って、腹帯(日立帯)を贈りましょう。さっそくフツヌシ様にお頼みしなくては♪」
 どんな時代でも、宇宙と(子宮で)ダイレクトにつながっている女性の存在なくしては、語れない。
実質的には、女の戦いだった。歴史の表に出ようと出まいと、女性の[効果的な後ろ立て]がない男性が、勝負に負ける。それだけのことなのだ。
「英雄、色を好む」といわれるが、それは「力のある男性は(精力があるので)女好きだ」という意味より、むしろ「女性のパワーなくしては、戦いに勝てない(英雄になれない)」ということを表している。
 女性がその役割を忘れた現代、世界は「真の太陽」を失い、闇の中で争いに満ちてしまった。
ソサノヲは、八重垣の家臣(オミ)として、朝廷から認められ、許されることとなった。
 ヒカワの地にイナダ姫の宮(後の出雲大社のもと)を建て、八重垣の歌を姉和歌姫(昼子姫)に捧げたという。
   「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠めに 八重垣作る その八重垣わ」
--八重谷に棲むオロチをこの地で討ち果たし、天照大神からは八重垣の幡も賜ることができました。その悦びに、この地に宮を築き、忠誠を誓う印として八重垣をはり巡らします。
折りしも身籠った妻をその宮の中に籠め、夫婦むつまじきことによって顕われる神力によって、オロチから妻を朝敵から大君を守護奉ります---(「言霊-ホツマ」より鳥居礼:訳)
 イナダ姫の手紙をチャネルした時、私も見事だなと思った。文章は現代語訳で来ることが多いのだが、自分でこんな文章は考えつかないので、チャネリングだということが良くわかった。

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◆娘の結婚とその後
 その後、ソサノヲの住むヒカワは「出雲(イズモ)」と呼ばれるようになった。
ソサノヲは朝廷には戻らなかったが、かの地で軍事訓練を担当していた。ホツマでは、3人の姫(娘)と5人の息子に恵まれた、とあるが、有名なのは3男の奇杵命(クシキネのミコト)と5男の葛木一言主命(カツラギヒトコトヌシのミコト)で、特にクシキネは母イナダ姫の柔らかな琴の音(奇しき音)で育ったといわれ、後に初代の大物主(オオモノヌシ=右大臣)になった人物。アマテル神と早子姫の間に生まれた三人娘の一人:竹子姫(沖津島弁財天)と結婚した。
 ちなみに、クシキネは大己貴(オホナムチ)とも呼ばれるが、息子の奇彦(クシヒコ=後の「大国御霊神:オオクニミタマ神」=恵比須神)の大国との混同と仏教の影響で、今は「大黒様」とも重なっている。
 今回のチャネリングでは、ソサノヲの末娘の話なのだが、名前の記録があやふやで検証できないので、とりあえずホツマに出てくる名前「スセリ姫」で呼ぶことにする。
 都から、貴族階級の青年が軍事訓練にやって来た。朝廷の氏族の子息ということで、雅びな態度がハナにつく感じもするが…幹部候補なので、訓練が終わればすぐ隊を任される身分だった(映画「愛と青春の旅立ち」のようだ←古い)
 訓練を受ける若者達は、休憩時間にやってくるソサノヲの末娘の姿を見るのを楽しみにしていた。
訓練生A:「スセリ姫、今日の髪型はまた一段とかわいいな…」
訓練生B:「あれで、父親似だそうだ」
 都から来た青年も、その姿に一目惚れしていた。
青年:「美しい…」
 ある日、スセリ姫と青年が仲良く歩いている姿が目撃された。幹部候補生の彼は、訓練宿舎とは違い、ソサノヲの館に寝泊まりしていたのだ。
稲:「二人は、好き合っているようですよ」
 妻:イナダ姫はこともなげに話したが、それを聞いたソサノヲの心中は穏やかではない。
ソ:「なに?!許せん! まだ若造のくせに、なんだその手の早さは!」
稲:「あなたのお弟子ではないですか」イナダ姫が、思わず微笑む。
ソ:「世間知らずの気取りやだぞ?」
 ソサノヲは気に入らない。青年は都会人を気取って、よくうんちくを垂れたりおしゃべりをしていたので、軽い男のように見えた。無口なソサノヲとは逆タイプとも言えるが、むしろ彼女にイイ所を見せたいという焦りだったのだが。
 それでも、そんな男のことを、確かに娘:スセリ姫は気に入っているようだった。父親として放っておくわけにはいかない。
青年:「私だってただの戦好きとは思われたくないですからね。和歌ぐらいたしなんでおかないと…。やっぱり今どきは、文武両道でしょう」
 その日の稽古が終わり、みんなが宿舎に帰ろうとしていた時だった。
ソ:「残れ。話がある」
青年:「はい?」
ソ:「私の娘と何を話していた?」
青年:「は、和歌の手ほどきを頼まれましたので…」
ソ:「和歌の手ほどき…? それだけか?」セリフはそこまでだが、青年を見据える目が恐い。(それだけじゃないだろう?和歌なんか、伯母の和歌姫からいくらでも学べるんだからな!)
青年:「そっそれだけです」(…っていうかソサノヲ様?すごい殺気なんですけど)。
 青年は圧倒されてうろたえる。ソサノヲは黙っていたが、その目は確かに「私の娘に手を出しておいて、タダですむと思うなよ〜」と言っていた。
ソ:「ほう、それでそなたはスセリ姫をどう思う?」
青年:「どう…って。美しいですよね。聡明で気立てがよくて…まあ、意外とガンコなところもありますけど(笑)」
ソ:「それだけか」
青年:「え…?いや、素晴らしい姫だと思います」
ソ:「その素晴らしい姫に、そなたは好意を感じることはないのか?」
青年:「や…そ、それは…あの…もちろん……はい」
ソ:「どうなんだ!好きなのか?」
 どう答えても殺されそうな迫力なんですけど〜。青年は恐怖におののきながら答える。
青年:「す…好きです」
ソ:「ふん!」ソサノヲは青年を一瞥すると、立ち去った。その背中は「お前になんかやらん!娘を泣かせたら、殺す!」と言っていた。
 ソサノヲは気に入らない。が、確かにあの男は本気で娘を想っているようだ。まともに返事して来た態度が、ますます腹立たしい。
 今度はスセリ姫を呼んで、確かめることにした。
ソ:「おまえは、あの男のことをどう思っているのか?」
ス:「素晴らしい方だと思います」
 あの男が?素晴らしい? 思わず声を荒げてしまった。
ソ:「あんなやつのどこが?!」
 姫もムッとして
ス:「お父様に似てらっしゃいます。強くて、優しいし…頭の良いかたです!」
ソ:「(ぐっ…)」
 二の句がつげない。“あれ”が自分に似てるとは思いたくなかったが、娘(と妻)に怒られるのは苦手なのだ。
あえていうなら類似点はもうひとつ、イケメンだというのもある。
 本当はソサノヲから見ても、青年には見どころがあった。ちょっと軽いヤツだとは思ったが…さすがに朝廷から推薦されただけあって、他の若者とは違う実力は認める。
だが、自分の娘に手を出したとあれば、話は別だ。
ソ:「あーゆーのは、おまえの他にも妻をめとるかもしれんぞ」
ス:「かまいません」
ソ:「な…に?」
ス:「必要であれば、何人でも。…そういう立場になるかただと思います」
ソ:「だめだ!そんな男! おまえを悲しませるようなら…」殺してやる、と言いたかった。
ス:「わたしは悲しんだりしません!」
ソ:「……」 あぜんとする、ソサノヲ。娘も本気らしい。(そんなに…好きなのか…)
 肩を落として、部屋に戻った。反対したら、駆け落ちでもしかねない娘だ。妻:イナダ姫に愚痴をこぼす。
ソ:「母親似だ、スセリ姫は。言うことを聞きやしない」
稲:「しっかりした子ですよ」妻は微笑んで言った。「あなたの娘ですから」
 ソサノヲは覚悟を決めた。
ソ:「とにかく、交際は認めてやる」
青年:「えっ」
ソ:「いいか!結婚を認めたわけじゃないからな!影でコソコソつき合われるよりマシだからだ!」
 喜ぶ青年を制して、言葉を続ける。
ソ:「ま…あ、そなたが私の特訓について来れたら(結婚も)考えてもいいが…。
 半端じゃなく厳しい訓練だからなぁ…都育ちの(ヤワな)男には、荷が重いかもしれん。無理だと思うなら、いつでもやめてかまわんぞ」
 彼女の父親に、バカにされたままでいられるわけがない。
青年:「やります!」やってみせますよ!受けて立つことになった。
 とはいえ、相手は一騎当千の武将、ソサノヲなのだ。通常の訓練後の剣術の特訓で、青年はビシバシやられてしまう。
ソ:「勝負あったな」
青年:「まだまだ!」(くそ〜。特訓…って、まるでイジメじゃないか!このオヤジ…。負けてたまるか!)
 青年もなんとか食い下がってはいるが、そう簡単にかなう相手ではなかった。
ス:「お父様、ひどいわ!」
ソ:「あいつがやると言ったんだ。 手当てしてやれ」
青年:「スセリ姫… 大丈夫、私は大丈夫ですから」初日からアザだらけだ。
 姫が、薬草を摘んで作った膏薬を塗って手当てする。
青年:「あの頑固オヤジに負けてたまるかー!」青年も決意を新たにするのだった。
 イナダ姫は母として、若い二人のゆく末と夫の思いを見守っていた。
ス:「ひどい、ひどいわ!お父様」
 毎日の特訓で、ヨレヨレになって戻ってくる青年を心配するスセリ姫。
稲:「お父様にも考えがあってのこと、信じるのです」
 納得いかない娘だが、母は毅然とした態度で諭すのだった。
稲:「手ぬぐいをお渡しする時も、いつもお父様を先になさい」
ス:「お母様…、なぜですか?」
稲:「それが、女としてのたしなみなのです。そうすれば、お父様があなたの望みを叶えてくれますよ」
 青年がようやくソサノヲの剣についていけるようになって来た、と思ったら…。
ソ:「よし、剣術はここまで。 タヂカラ!」
 ちょうどヒカワに遊びに来て、訓練に参加していたタヂカラが呼ばれた。
ソ:「体術(格闘技)の訓練をたのむ。組み手をしてやってくれ」
タ:「おうっ♪」
 ええ〜っ まだやるのか?青年は、気が遠くなりそうだった。どうあっても、結婚を認めないつもりだなー!このオヤジはっ。
足腰立たないようにしごかれた。投げ飛ばされて肉のタタキ状態。よくほぐされて、へろへろだ。ぐったりして力も入らない。
 ソサノヲはといえば、組手の後もまだ訓練。タヂカラと今度は真剣で打ち合っている。「もう歳だ」などと言い合ってはいるが、青年から見れば、年令をまったく感じさせない動きだ。とんでもないスタミナの違いだった。人間じゃない…いや、バケモノだきっと。
青年:「すごい…」二人の剣さばきが、速すぎて見えない。(私には、手加減していたのか…)。
 確かに、自分のことをヤワだと言いたくなるのも理解できるが…やはり悔しい。
訓練のあまりのハードさに、食欲もなくなった。
ス:「少しお休みになって。父にはわたしから話しますから」
青年:「いいえ。これは男と男の戦いですから」引くわけにいかないのだ。
 そうはいっても、連日の疲れがたまって、身体が鉛のように重い。
青年:「だめだ…身体が動かない」姫に肩をかりて立ち上がるのがやっとだった。
ス:「そんな身体では、ムリです」
青年:「いいえ、行きます!」姫に同情されるのも情けない気がした。
 やっとの思いで、訓練の整列に加わる。ソサノヲが前を通り、一瞥した。
ソ:「顔色が悪いぞ」
青年:「大丈夫で…す…」
 そのとたん、ソサノヲ様が視界から消えた。いや、自分が倒れたのだった。
 誰かの優しいまなざしを感じて、目がさめた。
青年:「スセリ姫?」
 目を開けると、ソサノヲ様が目の前にいた。驚いたが、よく見ると目が似ているのだこの父娘。
ソ:「自分の身体の管理もできんのか」
 冷たく言われ、さっきまでの優しい波動は気のせいだったのか…と思う。
青年:「申し訳ありません」起き上がりたいけど、その力も出ない。
ソ:「これが戦場なら、部下全員失っていたな」
 ガーン!こんな時に、そんなコト言わなくたっていいじゃないか〜と思いつつ、自分の不甲斐なさ、浅はかさに悔しさがこみ上げてくる。泣きそうになるのを、唇をかみしめて我慢した。
ソ:「まあいい、今日は休め。 明日から新しい訓練に入る」
 ソサノヲは淡々とした口調で言うと、部屋を出て行った。入れ違いにイナダ姫が部屋にやってきて、
稲:「さあさあ、薬湯を召し上がれ。 お父様があなたのために摘んでいらしたのですよ」
 スセリ姫を呼び、世話をさせる。
青年:「苦い…」
ス:「父には、薬草を扱う部下がいるのです。クシキネ兄様も、薬草の勉強に夢中なの」
 ソサノヲ様は、自分のために訓練を部下にまかせて薬草を煎じてくれたのか。優しいんだか、厳しいんだか、よくわからない。
 たっぷり寝たので、翌日には起きられるようになったが、まだ少し身体が重く感じる。
部下A:「こちらのお部屋でお待ちください」新しい訓練と言われて案内された奥の間には、先客がいた。
ク:「あ、あなたも瞑想なさるのですか?」にっこりと嬉しそうに微笑むのは、ソサノヲの三男:奇杵命(クシキネのミコト=のちの大物主=オオナムチ=大黒様)だった。
青年:「瞑想…とは?」聞いたことはあるが、軍事訓練に必要だとは思ってもみなかった。
ク:「霊的な力に目覚めるために、内観をするんです」
 呼吸法をならって、静かに座って目を閉じた。感覚が研ぎ澄まされていく。そうか、いろいろ身体の自由が効かない方が、かえって集中できるのか。
青年:「体力が残っていたら、むしろこの感覚はわからなかった…」
 ソサノヲが静かに語りかける。
ソ:「そなたは、いずれ大隊の指揮をとる身になるのだろう?多くの兵士の命を預かることになる。判断ひとつ誤れば、多くの兵を危険にさらし、民の命も失うことになる」
 青年は黙って聞いていた。
ソ:「ことによっては、私もそなたの指揮下で戦うことになる。しっかりしてもらわんとな」
 そうだったのか。自分より情けない武官に従うわけにはいかないのだ。少なくとも尊敬に値する人間でなければならない。自分の大事な娘を預けるとしたら、なおさらだ。ソサノヲ様は、本気で私を…! 私を認めてくださるために…。
心が軽くなって、身体も軽くなって来たようだ。
 青年は、毎朝瞑想をしてから、訓練に出ることになった。
青年:「剣が軽い…」
 感覚が鋭くなって、ソサノヲの剣を受けることも楽にできるようになった。
 大事な娘、愛する娘がしあわせになって欲しいという願いは、どんな父親でも同じだろう。
娘はといえば、どんなに親が反対しても、いずれは自分の力で彼の所に行ってしまう。
 苦労して手に入れたものには価値を見い出す。価値あるものは大事にされる。ソサノヲが簡単に結婚を認めなかったのは、愛する娘へのせめてもの親心だった。
 のどかな春の陽の中で、妻:イナダ姫の琴を聞きながら、くつろぐソサノヲ。
ソ:「みんな…いなくなってしまう。…寂しくなるな…」
稲:「子供はいつか大人になって、旅立つものでございましょう?」
ソ:「そなたは、…ずっとそばにいてくれるか?」
稲:「もちろんです」
ソ:「私を一人にしないでくれ」
 イナダ姫は、ソサノヲの手をとり寄り添って言った。
稲:「わたしはいつも、あなたのそばにおります」
ソ:「私は高天原には帰らない。ずっとこの地で眠っていたい…」
…以上が、やって来たメッセージにもとづく物語り。ここから先は興味がなくて聞いていない。
チャネリングで得た情報についての検証:
・宇宙は多次元なので、こちらの焦点の合わせ方によって、情報の質や傾向も変わる。
・ホツマで、ソサノヲはマナイの朝日大神宮に参拝したと書かれている。たんなる荒金(あらかね)の血筋の乱暴者に、そんな信心深さがあるとは思えない。少なくとも、天の力は信じていたということか。
・ソサノヲについてホツマでは、婚約者との結婚が遅れたことで、心が不安定だったとも言われている。アマテル神も、夫婦和合が平和の基本だと教え、「伊勢(イ・セ=イモ&ヲセ[女・男])の道」を伝えているほどだ。
・ホツマでは、兄の皇位を狙っていたという話があるが、後にアマテル神が許しているところをみると、それほど重大事だったわけではないようだ。
 むしろ、実力がありすぎて疎まれた、という方が自然でもある。
・ソサノヲ異民族説もあるが、その時代とホツマのもとになったアマテル神の時代とを検証する資料がないので、保留。
 イズモとイセでは、同じ朝鮮半島を経由した民族が、それぞれ時代が違うので争っていて、弥生文化だから縄文人とは違うという説もある。
・ちなみに、ホツマの家系図をみると、長男が家督(血筋・皇位)を継ぐというのは、めずらしいことだったようだ。たいてい、次男か末の息子が相続している。そういえば、ユダヤ教も末の弟が跡継ぎだった。
・ホツマでは、アマテル神は男性なので、この頃には魂の記憶もムー時代の記憶も失われていることが理解できる。
・しかし、本来(太古)のアマテラス神は[女性]なので、「古事記」が政略として意図的に「ホツマ」を改ざんしたとしても、太陽神が女性であることは宇宙の法則には合致している。そこが矛盾であり、興味深い所であり、数々の誤解のモトでもある。
・ム−(レムリア)の時代のアマテラス女神と将軍スサノヲの関係が、後の伝説につながっているらしい。
 個人的には、レムリアやム−とアトランティスの時代の話になると、宇宙から来た存在は大きく5種類で、五色人と呼ばれたりするが、地球にやってきた魂はすべて役割を持っているので、高次元とのつながリに目覚めれば人種はどうでもかまわないのでは?という立場である。
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